研究課題
既存木造住宅の耐震性をめる上で、必要最低限の郊率的な耐震補強方法を検討するためには、既存木造住宅の倒壊限界や最大耐力を適切に予測する必要がある。そこで、解体撤去される予定の既存木造住宅(神奈川県下に建つ築28年の2階建て、1階床面積58.79m^2、延床面積85.28m^2、比較的一般的な間取りで、屋根は和瓦、内壁は石こうボードと化粧合板、外壁はラスモルタル。2階の床のうち和室は広葉樹の荒板に畳敷き、洋室はフローリング敷きであるが、小梁を省略し、約45×90mm@303mmの根太を配した枠組壁工法的な構法)を供試建物として大変形加力実験を行った。その結果、最大耐力は最も変形が大きい南側壁線が21.5rad、最も変形が小さい北側壁線が45.8rad変形したときに195.6kNを記録し、これは層せん断力係数1.04に相当する。その後、圧縮筋かいが105mmの正角の桁を破壊させたり、外壁モルタルが剥落したり、面材や筋かいが面外座屈したりするなどして破壊が進行したものの、南側壁線が1/2.5radに達しても倒壊には至らなかった。以上は、土塗り壁を主たる構造要素とする木造住宅に関する既往の研究で得た、木造住宅の最大耐力時の変形は約1/30rad、倒壊限界は1/3radを超える可能性があることを再現している。また、最大耐力195.6kNは、(財)日本建築防災協会発行の「木造住宅の耐震診断と補強方法」(2004年版)における耐震精密診断2-保有耐力による方法(垂れ壁の評価法を含む)に基づいた推定値156kNに対して25%高いが、評価結果は安全側でなければならないことを勘案すれば、耐震精密診断2は簡易な割にある一定の精度があると言える。結論として、モルタル外壁を有する既存木造住宅の大変形加力実験から、以下のことが得られた。1)主な水平抵抗要素をモルタルとする場合でも、最大耐力は1/30rad付近で発現され、倒壊限界は1/3radを超える可能性が高い。2)耐震精密診断2-保有耐力による方法は、静的加力試験結果に対しても安全側の評価である。
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2008年度日本建築学会大会学術講演梗概集 C-1(掲載確定)