研究概要 |
既存木造住宅の主たる構造要素などで、その構造方法を類型化し、過去に技術データが得られていない構造仕様について実施した大変形加力試験の結果から得られた水平せん断耐力、倒壊限界変形量を整理した結果、1)モルタル外壁を有する既存木造住宅は軸組構法、枠組壁工法であるか否かにかかわらず、約1/30 radの変形で最大耐力に達し、倒壊限界変形量は1/2 radを超えたあたりにある。2)倒壊限界変形量はP-Δ効果により積載荷重に依存し、実験時にはほとんど無い積載荷重を考慮しても倒壊限界変形量は1-10 radを超える。3)耐震診断と補強方法における一般診断の劣化による低減係数は、移築した試験体と、新規材料により再現した試験体の耐力差に近い値となり、その妥当性が検証された。4)実際の既存木造住宅のモルタル外壁において、ラスを留めつけるステープルの種類を整理した結果、既存木造住宅においてラスを留めつけるステープルの寸法は、3,4種類に分類できる。5)実際の既存木造住宅から採取したステープルの接合耐力を実験的に求め、新規材料により再現した結果と比べると、その耐力の低下率は千差万別であった。6)実際の既存木造住宅から採取したステープルのせん断耐力の推定低下率と、当該建物の耐震診断と補強方法の一般診断における劣化による耐力低減係数は必ずしも一致しない。 以上の結果をとりまとめて、日本木材学会、日本建築学会、World Conference on Timber Engineering(世界木質構造会議)において、研究成果として公表した。
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