研究課題/領域番号 |
19380107
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
足立 伸次 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (40231930)
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研究分担者 |
井尻 成保 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (90425421)
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キーワード | ニホンウナギ / チョウザメ / イトウ / エストロゲン / アンドロゲン / 濾胞刺激ホルモン / 黄体形成ホルモン / 初期卵成長 |
研究概要 |
本年度は、ウナギ、イトウおよびチョウザメを用いて、エストロゲン(エストラジオール-17β;E2)およびアンドロゲン(17α-メチルテストステロン;MT)処理が初期卵成長に及ぼす影響を昨年に引き続き調べた。その結果、ウナギでは、E2処理は約100μmまでの卵母細胞の成長を促進することが示唆された。イトウ2年魚(性分化後)を用いて、E2およびMTを12ヶ月間経口投与した結果、E2およびMT処理による卵成長促進効果は認められなかったが、脳下垂体の濾胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)の発現が促進された。特に、E2によるLH発現誘導は顕著であった。また、ベステルチョウザメ2ヶ月魚(性分化前)を用いて、E2およびMTを18ヶ月間経口投与した後、さらに通常餌で12ヶ月間飼育を継続した。しかし、E2およびMT処理では卵成長促進効果は認められなかった。 次に、チョウザメの初期卵成長の分子機構解析を目的として、アムールチョウザメ脳下垂体のFSHおよびLHのcDNAクローニングを行なった。得られた配列をもとに、大腸菌発現系により組換えタンパク質を作製後、家兎に免疫してそれぞれの特異抗体を作製した。本抗体は、アムールチョウザメだけではなく、ベステルチョウザメのFSHおよびLH産生細胞も特異的に検出できることが明らかになった。 さらに、本年度はカルーガとアムールチョウザメの天然交雑種カラムの人為繁殖に国内で初めて成功し、孵化後6ヵ月まで、脳下垂体および生殖腺形成過程を観察した。その結果、脳下垂体の成長ホルモン(GH)発現は孵化前後からすでに認められたが、FSHおよびLH発現は孵化後6ヵ月まで検出されなかった。生殖腺に関しては、孵化後6ヵ月には、生殖腺上皮に陥入がみられるタイプと、陥入がないタイプの2型の生殖腺が観察された。この上皮の陥入は卵巣分化の開始を意味することから、孵化後6ヵ月前後が生殖腺の形態的性分化開始期であると考えられた。
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