研究課題
人間の生産活動が活発になるにつれて、局所的な破壊にとどまっていた海洋環境が、地球規模の破壊にその様相を変化させてきた。海棲哺乳動物、海鳥、魚類、甲殻類などの海洋生物は、これまで人為的な捕獲によってその個体数を減少させてきたが、最近では、有機塩素系化合物、有機スズ化合物、重金属類、フッソ化合物などの有害化学物質海洋汚染による影響が指摘されるようになってきた。特に船底塗料や定置網の防除剤として利用されている有機スズ化合物は極めて毒性が高いことから、国際海事機構(IMO)では2008年から、有機スズ化合物の全面使用禁止に向けて、監視体制を強化し、国際的なモニタリング研究が推進されている。本研究では、アジア諸国やロシアの研究者と共同して、アジアやユーラシア沿岸海域における有害化学物質による海洋汚染状況を調査し、それぞれの化学物質の分布特性や蓄積特性を明らかにするとともに、生物影響についても言及することを目的とした。今年度に発表した論文は、(1)有機塩素系化合物に関する論文、および(2)有機スズ化合物に関する論文である。前者では、日本の太平洋沿岸のスジイルカに蓄積している有機塩素系化合物濃度を1978年から2003年までの間で比較し、DDTsやPCBsは、近年、減少傾向にあることを明らかすると同時に、降海型のサクラマスと河川残留型のヤマメに蓄積している有機塩素系化合物の濃度を比較し、この化合物が海洋由来であることや、海洋中の有機塩素系化合物がサクラマスによって河川に運搬される現象を明らかにした。後者では、三陸の沿岸に来遊するイシイルカの肝臓における有機スズ化合物の特異性を明らかにすると同時に、南海トラフなどの深海においてもこの人工化合物が運搬されていることを明らかにした。また、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどの沿岸域ではTBTの代替化学物質が検出され、代替化学物質による汚染が進行していることが示唆された。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 備考 (1件)
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http://cicplan.ori.u-tokyo.ac.ip/miyazaki/index.html