研究概要 |
2008年10月27-30日に鳥島周辺海域で目視調査を行い,約30頭の本種を確認するとともに,個体識別用の写真撮影,DNA分析用の糞便試料の採取と音声記録を行った.本調査により,この海域にミナミハンドウイルカが分布することが初めて明らかになった(新聞記事として掲載).鳥島以外では,2008年5月,前年度に続き,奄美大島・大島海峡において目視調査を行った.海況は良好であったが,鯨類の発見はなかった.また,長崎県対馬沿岸での本種と思われる鯨類の発見情報の提供を昨年度同様,地元研究者から受け,同海域のデータを蓄積した.御蔵島での野生ミナミハンドウイルカの行動観察も継続し,出産経験にともなう母子間行動の変化,休息行動等の研究を行い,成果の一部は動物行動学会で発表した.また,行動比較を行うため,シロイルカ,ハンドウイルカ,スナメリ,イロワケイルカに関する飼育個体の行動観察を複数の水族館で実施した.生理学の面では,本種の繁殖の季節性を明らかにするため,飼育成熟雄個体と雌個体について,定期採血を1年以上行った.血液試料が集まったため,水族館から試料提供を受け,今年度はメスのプロゲステロン濃度を測定した.しかし,排卵後の黄体形成を示すプロゲステロンの上昇は認められず,排卵はなかったと推察された.また,各種生理値の日周変動を明らかにすることを目的として,冬至,春分,夏至に4頭のオスを対象として24時間採血を行い,メラトニン,コルチゾル,テストステロン,直腸音の日内変化を調べた.メラトニン以外に日内変化が認められ,その成果は,日本水産学会大会で口頭発した.
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