研究概要 |
(1)魚類の行動に及ぼす特定波長光の効果 カレイ目マツカワにおいては白色水槽飼育が成長促進と無眼側黒化防止に有効である。この現象は特定波長の光に起因すると考えている。そこで発光ダイオードを用いて,光波長がマツカワの成長に及ぼす影響を調べたところ,成長は緑,青,黄,群の順に良好であった。一方,白あるいは黒水槽を用いてマツカワとキンギョを一定光周期(明期6:00-18:00)・水温の条件下で飼育した。その結果,マツカワでは体重増加率は白水槽で黒水槽より有意に高く,日間摂餌率も白水槽で黒水槽より有意に高かった。キンギョでは,逆に体重増加率は黒水槽で白水槽より高い傾向にあり,日間摂餌率は黒水槽が白水槽より有意に高かった。遊泳活動量には両実験ともに水槽色の影響はなかった。背景色がマツカワとキンギョの摂餌活動に影響すること,およびその効果が両魚種で異なることが考えられる。 (2)体色および食欲調節ホルモン受容体遺伝子の同定 キンギョにおいて2種のメラニン凝集ホルモン受容体(MCH-R)cDNAをクローニングし,一時構造を決定した。MCH-R1とMCH-R2はそれぞれ359と342アミノ酸残基からなり,共に7個の膜貫通領域を有する。相互の相同率は29%である。これらの成果により,次年度以降にキンギョにおいてMCHの作用部位を探索するための道具ができた。 (3)体色および食欲調節ホルモンの末梢での作用と特定波長光の関連 マツカワにおいて,MSH受容体1型が発現する主な組織は脳,眼球,精巣,皮膚であった。2型では脳,頭腎,精巣であり,5型では脳,心室,腸精巣,皮膚であった。既報のごとく,4型は脳,眼球,精巣,皮膚で発現する。これらの成績から,頭腎と皮膚を除く組織において,MSHが未知の生命王目鼻に関わっていることが示唆される。
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