研究課題/領域番号 |
19380116
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
長井 敏 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所・赤潮環境部, 主任研究員 (80371962)
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研究分担者 |
山口 峰生 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所・赤潮環境部, 室長 (00371956)
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キーワード | 遺伝子流動 / 個体群構造 / 集団分化 / 集団遺伝学 / 多型分子マーカー / Alexandrium tamarense / Alexandrium catenella / Heterocapsa circularisquama |
研究概要 |
研究目的に記述したとおり、有害・有害過鞭毛藻3種について、多型分子マーカーとして知られるマイクロサテライトマーカーを開発した。各種につき複数の海域からサンプリングを行い、Alexandrium tamarenseについては、ロシア1海域、日本7海域の合計8海域から440株、A.catenellaについては東シナ海3海域、日本沿岸から330株、Heterocapsa circularisquamaについては、日本沿岸3海域から125株のクローン培養株を確立し、集団遺伝学的解析を実施した。 1.A.tamarenseについて、9個のマーカーを用いて解析を行い、19年度内に、全個体の遺伝子型の決定までは修了した。現在、集団遺伝学的解析を行っている。鉛直コアサンプリングによる採泥調査は、北海道噴火湾においてのみ実施し、各年代に堆積した泥中に生存する種(シスト)を発芽させ、現在、培養株を確立中である。今後、過去に出現した集団間の遺伝子構造を比較し、どの程度、変化したかなど、構造の変遷や安定性について明らかにしたい。 2.A.catenellaについて、6個のマーカーを用いて解析を行った結果、瀬戸内海および三重県の集団は、比較的類似した集団構造を示したが、各ペア集団間に、有意な集団分化が検出された。日本海の個体群は、特異的な遺伝子構造を示し、瀬戸内海や三重県の集団とは、遺伝的に異なる背景を持つ集団であることが判明した。今後、さらに解析を進め、アジア海域各地に分布する集団の遺伝的類縁性・遺伝子流動を明らかにする予定である。 3.H.circularisquamaについて、14個のマーカーを用いて解析した結果、浜名湖、英虞湾、天草のペア集団間で、有意な遺伝的分化が検出された。浜名湖・英虞湾の集団は、天草の集団で検出された対立遺伝子をほとんど有しており、人為的な要因による本種の輸送過程があることを示唆する結果を得た。今後、さらに多くの海域の集団間の遺伝的類縁性を解析することにより、分布拡大要因を明らかにする予定である。
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