研究概要 |
本年度は、2種のAlexandrium属、A.tamarenseおよびA.catenellaのサンプリング・集団遺伝学的解析のみを実施した。呉湾におけるA.tamarenseの鉛直プロファイルは、表層から12cmまでは、1,000-1400cysts/cm^3の密度の範囲にあり、12-14cmに極大層6,840cysts/cm^3が見られ、その後、急減し、約40cm付近で検出できなくなった。北海道噴火湾におけるシストの鉛直プロファイルは、6-8cmと12-14cmの明瞭な2個のピークが観察されたが、密度は全体的に低く50-500cysts/cm^3の密度の範囲にあり、表層から32cmまでの層から約400のクローン培養株を作成した。また、広島湾、大阪湾、三重県英虞湾、仙台湾、北海道(噴火湾、苫小牧、浦賀)、ロシアのアニヤ湾の海水及び海底泥サンプルから単離したクローン培養株(合計363株)について、8個のMSマーカーを用いて分析を行い、以前、解析を実施した485株のデータと合わせて解析した(合計848株)。A.tamarenseの集団は、1)北海道、2)仙台・大船渡・広島県太田川河口・広島県廿日市市大野浦・呉湾、3)韓国・三河湾・三重県・神戸の集団におおまかに区分できた。仙台-広島間では、日常的にカキ種苗の移植が行われてきた経緯があり、A.tamarenseの人為的輸送を指示する結果となった。4)A.catenellaについては、日本沿岸6地点、台湾沿岸3地点の海水および海底泥から単離したクローン培養株(合計443株)について、4個のMSマーカーを用いて、集団遺伝学的解析を行った。日本および台湾の集団は、日本(八代海を除く)と台湾の大きく2個の集団に分かれることが判明した。日本海の集団は、他の集団と遺伝的に異質な集団であることが示唆された。
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