研究課題/領域番号 |
19380116
|
研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
長井 敏 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所環境保全研究センター有害・有毒藻類グループ, 主任研究員 (80371962)
|
研究分担者 |
山口 峰生 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海水産研究所, 主幹 (00371956)
|
キーワード | 遺伝子流動 / 個体群構造 / マイクロサテライトマーカー / 集団分化 / 有害・有毒藻 / ハプロタイプマーカー / Alexandrium catenella / Heterocapsa circularisquama |
研究概要 |
有毒渦鞭毛藻Alexandrium catenellaについては、2つの多型分子マーカーについて、それぞれ約580株について配列決定し、集団遺伝学的解析を実施した。ハプロタイプマーカーAcat16については、主に中国・日本の集団を中心として構成される2つの大きなハプロタイプ集団(祖先型)の存在が明らかとなり、その集団から複数の小さなハプロタイプ集団の出現が示唆された。フランス地中海の集団からは4つのハプロタイプが検出され、このうち2つは固有のハプロタイプを示し、地中海集団のアジア起源説は、マイクロサテライト解析による結果も合わせて否定的な結果となった。新潟県の加茂湖で2009、2010年の2年間にわたり、有害渦鞭毛藻Heterocapsa circularisquamaの赤潮が発生した。加茂湖集団の起源推定のため、浜名湖、三河湾、熊本県楠浦湾、加茂湖(2009および2010年)の5集団について、マイクロサテライト解析を行ったところ、浜名湖および三河湾の集団は、比較的アリル数も多く、遺伝子多様度が高かったことに対して、楠浦湾および加茂湖の集団はアリル数が少なく、アリル共有度も高い値を示したことから、近縁集団であることが強く示唆された。これは、楠浦と加茂湖の個体群が遺伝的に近縁であり、共通の個体群からその一部がおそらく人為的な要因により移送されて分布を広げたことを示唆する。2010年度は、加茂湖以外の海域から貝類種苗の持ち込みが禁止されていたにもかかわらず、本種の赤潮が発生した。2010年の集団は2009年の集団の遺伝構造と最も類似しており、このことは、本種が加茂湖で越冬に成功し、定着した可能性の高いことを強く示唆するものである。
|