アワビなどの藻食性無脊椎動物は、海藻に含まれる様々な多糖を分解する酵素をもつ。例えばアルギン酸、セルロース、マンナン、ラミナラン、キシランなどを分解するアルギン酸リアーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼである。アワビはこれらの酵素を消化液中に分泌し、それらにより海藻の多糖を分解して生じたオリゴ糖や単糖を炭素源およびエネルギー源として利用していると考えられる。それらのうち、セルロースやマンナンなどの分解によって生じるグルコースやマンノースは通常の解糖系路によって代謝可能であるが、アルギン酸分解物であるウロン酸やα-ケト酸は直接解糖系に導入されないため、どのように代謝利用されるか不明である。本研究は、アワビ消化液から各種の多糖分解酵素を単離し、その生化学的性状を解析すると共に、アルギン酸のような酸性多糖の代謝に関連する一連の酵素系の性状を解析することにより、アワビがどのように海藻酸性多糖を代謝利用しているかの全体像を明らかにするものである。
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