高マンノース型糖鎖に厳密な結合特異性をもつ海藻レクチンは分岐構造部分の認識部位の違いにより3つのタイプ(I、II、III)に分類され、新規の高選択的糖鎖プローブとして有望である。また、タイプIのものは抗腫瘍活性ならびに強力な抗HIV活性を示す。本研究では、これら高マンノース型糖鎖特異的海藻レクチンの糖鎖認識および生物活性の分子基盤を明らかにするとともに、抗ウィルス活性の探索と作用機構を検討し、抗ウィルス薬としての可能性を究明することを目的としている。 本年度の研究課題としていたタイプIIに属するアオモグサレクチンの一次構造解析については、新たに採集した同緑藻から精製標品を調製することはできたが、その分子構造については現在解析中である。また、タイプIに属するもののうち、供給の観点から有望な食用養殖種Kappaphycus alvazeriiのレクチンについても、3種類のイソレクチンを精製したが、その一次構造解析は現在進行中である。代わりに、2年目に予定していたタイプIに属するOscillatoria agardhiiの抗HIVレクチンの遺伝子クローニングおよび大腸菌による大量発現系の構築に関する研究は完了した(特許申請予定)。同発現系では培養液1Lあたり42mgの活性組換え体が得られ、組換え体の分子サイズおよび糖鎖結合特異性は天然由来のものと完全に一致した。本レクチンの糖鎖認識や生物活性の分子基盤を明らかにするために、現在本組換え体のNMRおよび結晶X線解析が進行中である。
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