1、本年度は一般農業法人経営に関する全国アンケート調査を実施し、これを分析することを最重要課題とした。とくに、(1)大量の農地貸付が一挙に起きるような事実の有無や原因、(2)耕作放棄地への大規模経営や法人経営の対応、(3)農地法改正による一般企業の農業参入の自由化に対する意見、(4)品目横断的経営安定対策や水田・畑作経営安定対策といった政策転換への対応、(5)法人経営が直面する問題の摘出と周年就業確保のための手段、(6)現在の採算水準や従業者の給与・報酬水準、などの特有の問題への調査項目を設定し、これを分析・検討した。その結果、大量の農地貸付という新たな事態の一端が明らかになるとともに、大規模法人農業経営のそれらへの積極的な対応が示され、さらに法人経営が耕作放棄地解消にも意欲的に取り組んでいることから、法人化が農業構造改革にもつ意義が鮮明となった。また、少なくない法人経営の経営改善傾向が示された。 2、1のアンケート調査で着目した、大規模法人農業経営における周年農業の確立を通じた周年就業の実現について、JA出資法人を含む3経営の長期データの収集と分析を行った。その結果、日本農業においてもすでに〔米+麦・大豆二毛作〕型大規模法人農業経営が土地利用型農業で成立しており、今後の食料自給率向上と担い手育成の課題の同時達成を実現する条件が存在していることが明らかになった。 3、農地法改正という新たな状況の下で、過去10年以内に新規参入した法人農業経営の実態を個別調査した。資金力や市場確保の点で有利な条件をもつこうした法人経営でっても、当初の農地条件や立地条件などによっては決して安定した採算性を確保できるわけではないことが明らかになりつつある。
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