研究概要 |
本年度は,日独の「わが村は美しく」表彰事業、受賞地区の比較を行うため,北海道幌加内町とバイエルン州ステファンスキルヒェン(Stephanskirchen),バーデン、ヴュルテンベルク州のノイエンベーグ(Neuenweg)における住民参加型地域づくり活動の実際を現地調査した。 調査結果によれば,農業地帯のステファンスキルヒェン(バイエルバッハ地区)では農地の交換分合とビオトープ(野生生物の生息空間)の造成をセットにして,農業生産の効率化と環境保全を両立させていた。また中山間地帯のノイエンベーグでは,森林の保全によって自然保護に取り組む一方,牧草地の復旧(森林化の阻止)によって景観の確保に取り組んでいた。ただし,こうしたハード事業が州政府と地域住民の連携のなかで進められていることは日本と同じである。 日本と大きく違うのはソフトの取り組みである。両地区ともに村を再生するための住民活動,それも都市と農村を結ぶための住民活動が活発に行われていた。ドイツでは傍観者はいない。地域をよくするためにやりたいこと,やれることを各人が能動的に取捨選択して行動している。この点については「わが村は美しく」金賞受賞地区の幌加内町といえども,ドイツのそれと比較して能動性に欠ける面がある。 この違いは,ドイツには住民参加型地域づくり活動の機会を提供する組織としてフェアアインがあるが,日本にはそれに相当するもめがないことによるものと思われる。日本には地域の活動単位としてむら(農業集落)があるが,そこでは家を単位とした全員参加型の活動が多くを占め,能動的というよりは受動的ないし防御的なむらづくりが行われることが多い。社会開発の観点からすると,この違いはきわめて大きい。
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