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2008 年度 実績報告書

日中における農村共有資源の保全・管理に関する経済分析

研究課題

研究課題/領域番号 19380132
研究機関農林水産省農林水産政策研究所

研究代表者

伊藤 順一  農林水産省農林水産政策研究所, 上席主任研究官 (80356302)

研究分担者 藤栄 剛  滋智大学, 環境総合研究センター, 准教授 (40356316)
キーワード農業経済学 / 資源経済学 / 計量経済学
研究概要

本年度は日本,中国の農村を対象として,農村共有資源の保全・管理に関する実証分析を行った。市場機構の作用が弱く,政府介入の余地も少ない共同体では,それを構成するメンバーの戦略的な行動が共有資源管理のパフォーマンスを規定する。これはまさにゲーム論が想定する世界にほかならない。実際に本研究の考察は,進化ゲーム理論が集団の行動原理を理解する上できわめて有用な概念であり,そこから導出された仮説が共有地問題の争点と深く関係していることを示唆している。具体的には,利用者の間で協調が成立し,共有資源が良好な状態に保全・管理される確率は,集落内に非農業就業機会が乏しく,換地を頻繁に行い,農家間の所得格差が小さく,資源の制約が適度に深刻で,様々な社会的交換ゲーム(共同作業の機会)が存在する集落で高い。いいかえれば,これらの条件を満たすコミュニティでは相互協調の機運が醸成されやすく,そうではない集落では「囚人のジレンマ」が発生し,共有資源の保全・管理は悲劇的な結末を迎える可能性が高い。
計量分析の結果は上記の仮説をほぼ肯定するものであった.水不足が深刻で,農民間の資産格差が大きく,所得均等に配慮していない集落ほど農家の出役頻度は低い.管理労働に対する農民参加は共同作業を行う機会が多い集落ほど積極的であるが,これは「ただ乗り」が別の機会で処罰されるというルールの存在を示唆する。出役と集落規模については,「ただ乗り」する者の排除不可能性とモニタリングにおける規模の経済を理由として逆U字型の関係が,先行研究によって指摘されているが,本研究の結果はそれと矛盾しない。集落内の非農業就業機会,民族の異質性は出役頻度を低下させるが,後者は統計的に有意ではない。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] The removal of institutional impediments to migration and its impact on employment, production and income distribution in China2008

    • 著者名/発表者名
      伊藤順一
    • 雑誌名

      Economic Change and Restructuring Vol. 41

      ページ: 239-265

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 農村共有資源管理のための共同行動-農業集落の規模と社会的異質性に着目して-2008

    • 著者名/発表者名
      藤栄剛
    • 雑誌名

      日本農業経済学会論文集

      ページ: 77-84

    • 査読あり
  • [学会発表] Collective action for local commons management : empirical evidence and hypotheses using an evolutionary game theory2009

    • 著者名/発表者名
      伊藤順一
    • 学会等名
      TEA春季大会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      2009-03-27

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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