研究概要 |
本研究では進化論的ゲーム論の概念を援用しながら,共有資源の利用に関する仮説を提示し,その検証を試みた。実証分析は筆者が中国雲南省昆明市で独自に収集したデータと日本の『農業集落調査』をもとに,おもに灌漑管理を対象として行った。計量分析の結果は提示された仮説をほぼ肯定するものであった。灌漑管理の出役頻度は,非農業就業機会が乏しく,用水の賦存量が適度に少なく,集落内の経済格差が小さく,共同体の中に様々な社会的交換ゲームが埋め込まれている集落で高い。また本研究の結果は,共有資源の管理を直接的な利害関係者に委ねた方が,協調行動が促進されるという通説を支持している。
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