研究課題
本研究では、人口減少時代に定住可能な拠点を計画する視点から、(1)集落計画の基盤条件、(2)定住自治集落の運営要件、並びに(3)集落の発展要件の提示という三つの目標を掲げ、次のことを明らかにした。(1)として、全国の農業集落を対象に農家人口構成面で安定的な集落を抽出し、その要因を集落の人口・農業基盤・生活環境・立地条件などから明らかにし、全国の集落分布構造を示した。また高齢層が一定以上の割合を占める集落を抽出し、それらが発揮する社会的役割の違いに応じた集落の成立要件と、今後の集落計画のあり方を提示した。さらに、全国の市町村における産業・暮らしなどの事業の実施状況を捉え、住民の定住と事業内容にみられる特徴・傾向と、定住化を進める上での事業・取り組みのあり方を提示した。(2)として、まず地域社会の成立とその再生産単位としての市町村に着目し、合併の有無による地域経営形態の差異を探った。また集落の社会関係資本を維持・再構築するための地域資源のあり方を捉え、今後の集落維持の指針を提示した。次に「環境価値」という新たな価値観に基づき、集落の維持・管理を行うことで定住拠点を維持・形成する方法を探り、地域において付加価値を生む主体や活動のあり方を示した。さらに、少子高齢化状況下で保健・福祉システムを維持する上で、地域に求められる組織・活動面での具体的要件を明らかにした。(3)として、まず、人口減少下における集落の自治・管理体制の構築方法として、集落内の宅地・農地の管理体制や伝統的町並みの保全システム、さらに集落の自治・生産活動のあり方を、集落経営の具体的事例を通して明らかにした。また、地域資源や人的基盤を活かす事業・活動に着目し、自然環境や住宅ストックの維持・活用や、新規就農のシステム構築、転入者の受け入れ体制構築などの具体的事例から、発展的集落運営の実施要件や住民の定住化への課題を示した。
すべて 2009 2008
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農村計画学会誌 第27巻論文特集号
ページ: 173-178