研究概要 |
アースダムや堤防などの破壊事故は約40%が浸透流あるいは浸透に起因した現象に端を発している。その中でも土粒子の移動(パイピング)による内部侵食は,現象が複雑でありいまだそのメカニズムが不明な点が多い。パイピングによる浸透破壊を防止するためにはその発生機構を明らかにする必要がある。本研究は,流れの条件を考慮して浸透破壊理論を総合的な観点から確立することを目的とする。本年度は,次の事柄を明らかにした。 1.二次元集中流地盤の浸透破壊実験合計で25ケースの二次元集中流模型地盤について浸透破壊実験を完了し,無次元化の妥当性,実験結果の再現性,研究代表者らが提案するPrismatic failure conceptの妥当性を検証した。そして,種々の流れの条件による地盤の浸透破壊安定性について理論的,実験的に検討を加えた。 2.地盤の浸透破壊メカニズムの解明PIV解析を用いて,地盤が変形を開始してから破壊に至るまでの,砂粒子の挙動(地盤の浸透破壊挙動)について明らかにした。また,DEMを用いて,地盤の一次元上昇流による「損傷限界と砂粒子の移動特性」「浸透破壊と砂粒子の移動特性」「限界状熊と砂粒子の力学的特性」を明らかにした。 2.三次元地盤の浸透破壊に関する解析的・実験的研究三次元FEM浸透流解析プログラムFEMSEE6EC,三次元浸透破壊安定解析プログラムSEEPFL662Cを開発し,三次元地盤の浸透破壊に対する理論限界水頭差の推定を行った。また,実際に実験を行って,解析による理論限界水頭差と実験による変形開始時水頭差がほぼ一致することを明らかにした。 3.三次元地盤を軸対称と仮定することの妥当性の検討三次元地盤の浸透破壊に対する理論限界水頭差と軸対称地盤の理論限界水頭差を比較し,三次元地盤を軸対称と仮定することが可能であることを示唆した。
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