研究概要 |
本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指している.平成21年度は排出負荷や閉鎖性水域の水質動態の実態把握に努めるとともにそのサブモデルの構築し,さらに得られたサブモデルを結合させ,流域水環境統合管理モデルのプロトタイプを構築・改良した. まず,国内では,福岡市西方の瑞梅寺川流域内の複数の富栄養貯水池を対象に,動植物プランクトンの季節的消長と水域内部の窒素・リンの動態特性の観点から水環境評価を行い,水域に応じた水質改善対策シナリオの策定に係わる水環境工学的知見を得た.また,寡少な水中光環境下にある貯水池を対象とした水環境動態解析モデルを構築し,水質の動態特性を明らかにした. 次に,中下流域で混住化が進む流域である筑後川流域を対象に,流域水環境統合管理モデルのプロトタイプを開発改良し,その予測精度の向上に努めた.モデル開発に当たり,流域内の細密地理情報を効果的に取得可能なようにGIS(Geographical Information System)を援用した.同モデルの適用の結果,洪水イベントに伴う流域内の水や負荷物質(リン・窒素)の動態を時空間的に高解像度,高精度で予測可能なことが明らかとなった.さらに開発した筑後川モデルをベースに,福岡市西方の瑞梅寺川流域においても流域水環境統合管理モデルを開発した. また,海外では,ハノイ近郊紅河デルタにおける流域において,流域水環境統合管理モデルに必要となる流域情報の収集を進め,国内(筑後川流域,瑞梅寺川流域)で開発したモデルの適用を進めるとともに,低平地における負荷流出の特徴を表現するための改良を行った.
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