研究概要 |
本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指した.平成22年度は排出負荷や閉鎖性水域の水質動態の実態把握に努めるとともにそのサブモデルの構築し,さらに得られたサブモデルを結合させ,流域水環境統合管理モデルのプロトタイプを構築・改良した まず,富栄養化が顕在化する農業用貯水池を対象に水環境解析を行なった.自己組織化マップによる水質データのクラスタリングに基づいた水環境評価手法を提案し,藻類綱も含めた水質環境の季節的特徴を抽出できるなど,同手法の有効性を示した.また,クロロフィルaの連続観測データに基づいたカオスニューラルネットワークによるリアルタイム予測手法を提案し,藻類量の短期予測の可能性を示した ベトナム紅河デルタで,窒素化学肥料施肥が地下水水質に与える影響を明らかにするため,地下水(井戸水)のアンモニウム態および硝酸態窒素濃度を測定した.その結果,硝酸態窒素濃度は,飲料水の水質基準値以下であったが,アンモニウム態窒素濃度は,人体に有害なレベルに達していた.同肥料施肥量の多いバングラデシュ・ガンジスデルタでも同じ測定を行ったところ,地下水にやはり高いアンモニウム態窒素濃度が検出された.アジアモンスーンの上記のデルタ地帯では,窒素化学肥料施肥の水質に与える負荷が大きいことが明らかになった 次に,中下流域で混住化が進む流域である筑後川流域を対象に,流域水環境統合管理モデルのプロトタイプを開発改良し,その予測精度の向上に努めた.同モデルの適用の結果,洪水イベントに伴う流域内の水や負荷物質(リン・窒素)の動態を時空間的に高解像度,高精度で予測可能なことが明らかとなった.さらに開発した筑後川モデルをベースに,福岡市西方瑞梅寺川流域においても流域水環境統合管理モデルを開発した
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