牛肉の食味・品質評価法の開発を目的として、1.電気インピーダンスによるカット牛肉の脂肪含量・脂肪交雑の評価、2.生体測定でのインピーダンス特性による肉質評価および3.ATR-FTIRおよびGCによる牛肉の脂肪酸組成の調定と分析を実施した。 1.枝肉第6-7肋骨間切開面牛肉の胸最長筋、広背筋、僧帽筋各部の電気インピーダンス特性とその脂肪配向との関係を求めた。10kHzでの各筋肉平均導電率σは0.03〜0.17(S/m)の範囲にあり、通電方向と脂肪配向との成す角度により、導電率に±20%の変動が認められた。切開面の画像飾析より、筋間・筋内・皮下脂肪の面積、脂肪構成比を決定した。切開面筋肉部位の2次元形状モデルを作成、電気的特性を表す有限要素モデルを開発し、通電時の電流密度分布の計算機シミュレーションを可能とした。 2.月齢30ヶ月前後の成牛6頭の頸部-臀部間体幹の生体電気インピーダンス特性(10Hz〜1MHz)を調べ、Cole-Coleの円弧を確認した。Haydenモデルの細胞内・細胞外抵抗、膜容量を求めた。細胞外抵抗Raは110〜600Ωと分布するが、細胞内抵抗Rsは80Ω前後に収束し、細胞内抵抗による脂肪量推定の可能性が示された。 3.枝肉脂肪をGCとATR-FTIR法により測定した。筋内・筋間・皮下脂肪の脂肪酸組成の主成分分析より、皮下脂肪と筋内・筋間脂肪にグループ分けが可能であり、皮下脂肪では筋内・筋間脂肪に比ベオレイン酸が多い。生脂肪、抽出脂肪のATR-FTIR測定により、構成脂肪酸の不飽和度に依存するスペクトルのピークが認められた。 4.黒毛和種牛肉の各脂質クラスの単離を行い、TGへの脂肪酸結合位置の分析方法を確立した。TGのsn-2位にはオレイン酸が優先的に結合しており、不飽和脂肪酸含有率も他の結合位置に比べ高い。
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