研究課題
農業生態系ロボットを「農業生態系のもとで自律的に行動する知能ロボット」として概念を構築し、必要な条件と基礎特性の解明を行った。具体的課題として、国内外における暖地型水稲作の雑草防除、外来有害動物であるスクミリンゴガイ(通称、ジャンボタニシ)の猛烈な繁殖に起因するイネ食害の回避と生物多様性貧困化の修復、さらに農作業労力の軽減化を統合的に解決するため、農業生態系ロボットを利用する新たな方法の構築を究明した。イネ、雑草、スクミリンゴガイをめぐる水田生態系の調査を行うとともに、特に、スクミリンゴガイの動態について水深等をパラメータとして実験的に明らかにし、スクミリンゴガイをその生態を利用して収集し、軽便な作業で除去する方法を提示した。また、ベトナム、台湾、韓国における海外調査を行い、スクミリンゴガイの繁殖及び被害状況、特徴的な利活用の実態と問題点を整理した。ついで、ロトカ・ヴォルテラ競争モデルを導入して、イネ、雑草2種、スクミリンゴガイの競争モデルを提案し、安定性と生態系の遷移を求めた。また、水稲作における農作業システムの視点から、イネ、雑草、スクミリンゴガイ間の食う食われる関係と競合を明らかにした。さらに、スクミリンゴガイを利用する水稲の環境調和型防除体系を解明し、農業生態系ロボットの作業方法を明らかにした。これらを踏まえて、農業生態系ロボット室内実験システムの設計と一部の製作を行った。垂直多関節型6軸ロボットを導入して、スクミリンゴガイを合理的に管理、除去するためのハンド部ツールの試作を行い、農作業動作のプログラムを作成した。また、圃場環境や水田生態系に関する情報を取得するためにフィールドサーバを実験システムに導入した。以上、初年度の研究によって、農業生態学に基づいて、農業生産と環境保全の両者に寄与する農業生態系ロボットが革新的な農作業技術として展開可能なことを示した。
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Journal of the Faculty of Agriculture, KyushuUniversity 53
ページ: 115-119