研究概要 |
本研究の目的は苗や果実など植物体の三次元形状を迅速に測定するコンパクトな装置を開発することである。農業分野において,苗など対象物の三次元形状を迅速に測定できれば,個体別の葉面積や受光量が把握できメリットが大きい。測定方法としては,一台のカメラと複数の鏡を用い,基本的には視体積交差法のアルゴリズムによって,測定対象物の三次元形状をデータとして再構築する。 19年度までの研究で,視体積交差法では原理的に植物の葉など薄い形状の物体を測定するのが難しく,正確な測定のためには,適切な鏡の配置とキャリブレーションの精度が重要であることが明らかとなった。このため,まずは複数のカメラを配置する代わりに,回転ステージを用いて測定対象物を回転させるとともに,一枚の鏡の向きを変更できるようにし,適切な鏡の配置を明らかにした。また平面の格子パターンを撮影してキャリブレーションを自動的に行えるようにした。この結果に基づいて,20年度には5枚の鏡を二段階に配置した,10枚の鏡による撮影装置を製作した。この装置ではカメラの内部パラメータと位置,向き,および10枚の鏡の位置と向きを知ることが必要で,キャリブレーションで同定すべきパラメータが非常に多くなる。本研究では,格子パターンを印刷した立方体を撮影することで,複雑なキャリブレーションを自動で行うアルゴリズムを開発した。これにより三次元形状の精度が向上した。更に,予め作成した植物体の形状モデルを測定結果に適用することで,視体積交差法の原理的な弱点を克服する方法を検討した。これに関連して,20年度はHard Pointの概念を導入した。これは視体積交差法によって得られた3次元データに含まれる点の内,測定対象物に必ず属すると言える点のことである。測定結果からHardPointを抽出した結果,葉の輪郭をよく再現しており,モデル適用の見通しを得た。
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