黒毛和種牛のGH遺伝子多型と枝肉成績および内分泌機能との関連性を知る目的で、以下の研究を実施した。 (1) 宮城県と沖縄県におけるGH多型分布 宮城県の黒毛和種牛(雌、n=136)の血液(白血球)もしくは脂肪組織からゲノムDNAを採取し、GH遺伝子多型を比較した。その結果、合計3種類の遺伝子多型が見出され、AA、AB、BB、AC、BC、CC型がそれぞれ21、22、20、13、19、5%であった。この比率は、沖縄県での分布と類似していた。脂肪酸合成酵素遺伝子多型についても解析に成功した。その結果、宮城県ではWW、WR、RR型は38、39、23%であり、沖縄県(8%)よりはRR型が多かった。 (2) GH多型と枝肉成績との関連性 A型を持つ牛の枝肉重量、増体量、ロース芯面積、皮下脂肪圧、BMSなどは、それ以外の型よりも有意に大きかった。この効果の一部は、B型でも確認された。 (3) GH多型と筋肉内脂肪酸組成との関連性 一方、C型の牛では、オレイン酸濃度、一価の不飽和脂肪酸濃度、不飽和脂肪酸濃度などが、他の型の牛よりも有意に大きかった。 (4) GH多型と血液中GH、IGF-I、インスリン濃度の関連性 10ヶ月齢時の黒毛和種仔牛の血液中GH基礎濃度およびGHRH刺激GH分泌能をAA、BB、CC型で比較した。その結果、IGF-1濃度は、GH濃度と平行していた。一方、レプチン濃度は体重と反比例していた。 この結果は、GHRH刺激GH分泌能は、AA型で最も大きく、CC型が最も低かった。この傾向は、基礎インスリン濃度にも認められた。IGF-I濃度には明確な差は認められなかった。
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