研究概要 |
本研究は、「3次元退行カスケードの解明を基盤として、上位の黄体退行仲介因子の複合的抑制による退行しない黄体を作出する」ことを目指し、黄体退行局所調節メカニズムの概念の進展と受胎率向上への新しい技術開発の展望を得ようとする。 実験1 : 退行中の黄体組織におけるタンパク・遺伝子発現に関する3次元変動データベースの構築モデル : 中期黄体を持つウシ(発情周期Day8-12)にPGF投与により黄体退行を誘導し、0, 5, 15, 30, 120, 720分後に黄体組織を採取した。 結果 : 黄体内のPGF受容体(FPr)に着目した。免疫染色化学によりFPrは黄体細胞及び血管内皮細胞に局在した。退行中におけるFPr isoform (FPr-original, ・および・の3種)mRNA発現変動は、PGF投与後の抑制度合及び時間がisoform間で大きく異なったことから、FPr isoformは黄体機能へそれぞれ異なる作用を持つ可能性が考えられた。 実験2 : 「初期黄体vs中期黄体」モデルを用いたPGFの血管新生関連因子群への影響モデル : Day4(初期)とDay 10-12(中期)の黄体を持つウシにPGFまたは生食を投与後1hに黄体組織を採取した。また、初期及び中期黄体から黄体細胞・血管内皮細胞を単離培養し、PGFを添加した。 結果 : 黄体期初期のウシにPGFを投与すると黄体内の血管新生関連因子群(血管内皮増殖因子(VEGF)やVasohibin(血管新生抑制因子))の遺伝子発現が刺激されたが、黄体期中期では反対に抑制されることを見いだした。さらに、初期黄体から単離した黄体細胞・血管内皮細胞ではPGFがVEGF及びVasohibin遺伝子発現を刺激した。したがって、PGFは初期黄体では血管新生を刺激し、中期黄体では血管新生・血管維持を抑制すること可能性が高いこと、すなわち黄体時期で異なる血管制御機構を有する可能性が示された.
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