研究課題
1.バニロイド受容体チャネルの機能解析:ヒトのバニロイド(Transient Receptor Potential、hTR PV1)受容体の遺伝子を発現させたHEK293細胞において、メチルサリチル酸はhTRPV1を介するCa反応と電流反応を起こした後に、強い脱感作を引き起こした。また、ラットではメチルサリチル酸は侵害反応を抑制した。TRPV1の脱感作反応が一部鎮痛作用に関与していると思われた。2.背根神経節細胞のTRIV1反応の解析:TRPV1を発現している背根神経節細胞マウスDRG(+/+)とTRPV1遺伝子欠損マウスDRG(-/-)を用いて、炎症時に肥満細胞から放出されるヒスタミンの作用を調べた。マウスDRG(+/+)では、ヒスタミンは酸(pH<6)とカプサイシンによるCa増加反応と脱分極反応をともに大きく増強させた。しかし、DRG(-/-)では増強反応は生じなかった。このCa増加反応はH1受容体拮抗薬及びPLCとPKC拮抗薬で抑制され、ヒスタミンH2-H4受容体拮抗薬及びリポキシゲナーゼとPKA拮抗薬では影響受けなかった。これらの結果より、炎症時の痛覚閾値の低下は、炎症性細胞から放出されるヒスタミンが一部関与していることが示された。3.新生ラット摘出脊髄を用いた神経伝達物質と生理活性物質の反応:単シナプス反射電位と侵害受容反射電位に対するアデノシンの抑制機序とアデノシン放出機序を調べた。高炭酸とアデノシンによる反射電位抑制作用はアデノシンA1拮抗薬で消失した。高炭酸による抑制反応とアデノシン放出は、細胞内からプリンを放出する経路の拮抗薬や細胞外でプリンを増加させるATP分解阻害薬では影響受けず、アデノシン放出は細胞内アデノシンをトラップするホモシステインで有意に抑制された。高炭酸により細胞内アデノシンが増加し、細胞外に漏出することが示唆された。4.ラット腸管神経培養細胞における炎症による機能変化:摘出腸管神経叢細胞を各種炎症誘起物質で処置した結果、リポポリサッカライド(LPS)は腸管神経細胞のB1受容体を介すブラジキニン反応を増強することを見出した。この増強反応にはグリア細胞から放出されるIL-1βが関与し、PLA2とCOX2の活性化が関与することが示された。炎症時には腸管のグリア細胞と腸管神経細胞がクロストークし、神経機能が変化することが示唆された。
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