研究課題
イヌフィラリア症は予防薬の発達により、もはや驚異では無くなったようにも見受けられる。しかしながら、フィラリアは依然として日本全土に蔓延し続けており、予防薬の投与無しにはイヌの安全を確保することはできず、抜本的な対策の確立が獣医療上、至上命題となっている。そこで、申請者らはフィラリアと媒介節足動物であるヤブカの相互作用を解明することにより、イヌフィラリア症の分子基盤の理解を目指すこととした。ヤブカ-フィラリア媒介系を用いて病原体と媒介節足動物の相互作用の解析の結果、フィラリアのベクター蚊への宿主適応機構の一端が明らかとなった。寄生虫感染症の多くは、終宿主以外の動物や自由生活世代を経るなど、その生活環において複数の発生ステージを持つのが特徴である。その際、寄生虫は移行に伴う環境変化を刺激として、ステージの"切り替え(トランジション)"を行なっていると考えられる。環境応答性トランジション前後のL3内部の変化を明らかにするため、cDNAサブトラクション法を用いて、トランジションにより発現が上昇する遺伝子として、クチクラ関連タンパク質であるクチクリン-1(cut-1)とシステインプロテアーゼであるカテプシン-L(cp1)が単離された。これらの遺伝子を指標として、脱皮誘導条件下での発現動態の検証および機能阻害実験などから、イヌフィラリアL3の脱皮で機能する応答メカニズムの全体像、すなわち環境刺激により誘導される発育のトランジションシステムが明らかになりつつあり、ヤブカによるフィラリア媒介メカニズムの解明が期待される。
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