研究概要 |
低酸素暴露(10% O_2 in N_2),高二酸化炭素暴露(10% CO_2 and 20% O_2 in N_2),低酸素と高二酸化炭素の同時暴露(10% O_2 and 10% CO_2 in N_2)という3つ条件を設定し,それぞれ2,4,6,8,12,24時間ラットを暴露した。暴露実験後,頚動脈小体におけるTHの発現量をリアルタイムRT-PCRにより測定した。その結果,低酸素暴露を行ったラットの頚動脈小体ではTH mRNAは4-8時間,VEGF mRNAは2-4時間という比較的早い段階でピークを迎える強い発現増強が観察され、低酸素と高二酸化炭素の同時暴露を行ったラットの頚動脈小体におけるTH mRNAは12時間をピークと発現増強が遅延した。さらに二酸化炭素は単独ではこれらの分子の発現に影響を与えないが,低酸素による発現増強を抑制する作用を持つことが分かった。また、免疫組織化学による結果からTHに関してはタンパクレベルにおいても二酸化炭素によって低酸素による発現増強を抑制することがわかった。一方で、VEGFmRNAの発現変化は高二酸化炭素によって遅延することはなく、THmRNAとは発現メカニズムが異なることが予測された。DNAマイクロアレイ実験では,低酸素暴露,高二酸化炭素暴露そして低酸素と高二酸化炭素の同時暴露によって発現変化を示す分子の網羅的解析を行った結果,様々な分子の発現変化が観察された。一例として、頚動脈小体において二酸化炭素受容時に重要な働きを示すと考えられているH^+の細胞内濃度を調節しているNHEやCAなどのサブタイプの一部,抑制性調節物質であるドーパミンに関連する分子群に変化が認められた。
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