豚コレラウイルスの病原性に関与すると考えられる自然免疫回避機構を分子レベルで解明することを目的とし、樹状細胞における豚コレラウイルスの自然免疫回避システムの解明を行った。まず、自然免疫関連因子を追跡するために、それぞれの因子に対する特異抗体を作出した。ヒトやマウスのIFN産生調節因子7(IRF-7)遺伝子やIFN-β promoter stimulator1(IPS-1)遺伝子の配列との相同性から、ブタのIRF-7およびIPS-1の遺伝子をクローニングした。これらを大腸菌発現系で発現精製後、モノクローン抗体を作出した。これらの抗体は目的の抗原を細胞内で特異的に検出できた。豚コレラウイルス強毒株ALDまたは弱毒株GPE^-を樹状細胞に接種し、培養上清中の1型IFNの産生量を定量し、ウエスタンブロット法によりIPS-1、IRF-3、IRF-7およびウイルス蛋白N^<pro>の細胞内における発現量、局在、リン酸化、二量体の形成の有無を解析した。その結果、豚コレラウイルス感染細胞内ではウイルス非感染細胞に比べてIPS-1の発現動態に変化が起きることがわかった。この現象は豚コレラウイルス株の毒力には関係なく観察された。また、強毒株感染細胞ではIRF-3がプロテアソーム系を介して分解され、細胞内から減少することがわかった。この現象は弱毒株感染細胞では認められなかった。以上より、IRF-3発現量の減少には線維芽細胞における場合と同様に、ウイルス蛋白N^<pro>がこれに重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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