研究課題/領域番号 |
19380172
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲波 修 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10193559)
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研究分担者 |
稲葉 睦 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (00183179)
堀内 基広 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (30219216)
桑原 幹典 北海道大学, 名誉教授 (10002081)
平岡 和佳子 明治大学, 理工学部, 准教授 (00212168)
下山 雄平 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (50123948)
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キーワード | プリオン / 電子スピン共鳴(ESR) / スピンラベル法 / 動的構造変化 / 部位特異的スピンラベル法 / パルスESR / CJD / 構造生物学 |
研究概要 |
BSE等のプリオン病が発現する段階で最も重要なステップは、エンドソームでの酸性条件下での構造変化とそのプリオンタンパク質の重合高次構造である。従来のNMRやX線回折による分析ではこのような動的動きや構造変化の解析はその方法論から見て不可能であった本研究課題では、これらのメカニズム解明を目的に動的解析が可能なスピンラベル法と電子スピン共鳴法(ESR)を基本とした新たな方法を確立し、検討した。この目的のためにまず組換えタンパク質の構造の変異を調べたい場所にシステイン残基を部位特異的変異導入法により導入し、この場所にスピンプローブを導入した。この方法は部位特異的スピンラベル・ESR法(SDSL-ESR)といい、この方法をを用いることにより、マウス組換えプリオンタンパク質にはpH6〜pH5付近の低pHに対して感受性の高い部位がαヘリックス1とβシート2中に存在することが明らかとなった。さらに家族性CJDで見られるD177N変異を含むプリオンタンパク質ではこの低pHに対する感受性が変化することも明らかとなった。また、原子間力顕微鏡を用いたイメージング技術も確立しつつあり、低pH条件での5nm以下の繊維状の凝集構造を示すことに成功した。これらの結果は、今まで、凝集タンパク質が関与する構造生物学的立場からこのSDSL-ESR法は非常に有力な方法であることを示している。次年度の課題であるパルス波のマイクロ波を用いた二重共鳴ESR測定(DEER)の方法論も既に確立してきており。この方法では20〜80Åまでの長距離の動的構造変化や距離情報を得ることが出来ることから、プリオン全体の病的変化を起こしたときの実験的に根拠のある構造モデルを提唱できると思われる。したがって、次年度の研究結果が得られれば、今後のプリオン病の発症メカニズムや防御法の確立に極めて重要な意義をもつ結果であると考えられる。
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