研究概要 |
Staphylococciのゲノム配列情報を解析し、ブドウ球菌の重要な病原因子でありヒトの食中毒の原因毒素であるエンテロトキシン(SEs)遺伝子群をコードする可動性遺伝因子であるgenomic islandsを増幅するためのLA-PCR primer setsを設計し、特にSEB遺伝子と関連が深いnSa1グループのgenomic islandsをLA-PCR/RFLPにより検出・分類する系を確立した。さらに、SEB遺伝子を保有する黄色ブドウ球菌分離株をLA-PCR/RFLPとパルスフィールド電気泳動-southern blotを組み合わせて解析したところ、SEB遺伝子はnSa1グループのgenomic islandsにコードされるほかにも、異なったゲノム領域にコードされる可能性が明らかになった(投稿準備中)。 また、SEG-SEIR特異抗体を用いてsandwich ELISAにより各SEsおよびSElsを検出・定量する系を確立した。現在、本法を用いて当研究室で保有している食中毒株のin vitroでのSEs/SEls産生性を解析している。 さらに、霊長類モデルを用いて未だ嘔吐活性の有無が明らかにされていない新規なSE様毒素群、staphylococcal enterotoxin-like toxins, SEls(SElK, SElL, SElM, SElN, SElO, SElP, SElQ, SElR)の嘔吐活性を解析した。カニクイザルにこれらの毒素を経口投与し、連続5時間観察して嘔吐の有無を確認し、これらのSElsは何れも霊長類に対して嘔吐活性を有すること、およびこれらのSElsは今後SEsと命名されるべきであることを明らかにした。これらの新型SEsは古典的なSEsと同様にヒト食中毒の原因毒素となり得ることが推測される(投稿準備中)。
|