研究課題/領域番号 |
19380176
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
下田 実 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (50154323)
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研究分担者 |
岩崎 利郎 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (50262754)
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キーワード | 酵素阻害 / CYP3A / 薬物動態 / キニジン / プレドニゾロン / ヒドロコルチゾン / 血漿タンパク結合 |
研究概要 |
プレドニゾロン(PDSL)およびヒドロコルチゾン(HCZ)を頸動・静脈にカテーテルを装着したSDラットにイヌの抗炎症の目的で用いる用量を1週間経口投与した。その後、イソフルランの全身麻酔下でCYP3Aの基質であるキニジンを静注し、キニジンの体内動態に対するステロイド処置の影響を検討した。その結果、いずれのステロイド処置群においてもキニジンの全身クリアランスは対照群と比較して有意に低く、AUCは高かった。消失半減期は対照群よりも長い傾向を示した。以上の結果から、PDSLおよびHCZはイヌの臨床用量の経口投与でCYP3Aを阻害し、CYP3Aの基質となる薬物を併用した場合には代謝に起因する薬物間相互作用の原因となる可能性が示唆された。 ビーグル犬にPDSLを4週間にわたって抗炎症用量で経口投与した。投与2週間前、投与開始2日後、2週間後および4週間後にキニジンを静注し、キニジンの体内動態に対するPDSL処置の影響を検討した。その結果、PDSL処置開始後、2週間及び4週間では、全身クリアランスが増加する傾向を示したが、定常状態分布容積も有意に増加した。分布容積の増加はキニジンの血漿タンパク結合の低下に起因するものと考えられるので、キニジンに対する血漿中の主要な結合タンパクであるα_1-酸性糖タンパク(AGP)濃度が低下し、このため、分布容積は増加したものと推察された。また、血漿タンパク結合率の増加は全身クリアランスの増加を導くので、血漿中AGP濃度の低下によって全身クリアランスが増加したものと考えられた。消失半減期には有意な変化が認められなかったことから、PDSL処置のCYP3Aへの影響はさほどないものと予想された。 以上の試験結果から、イヌにおいては、PDSL処置はAGPへの影響を介した血漿タンパク結合に起因する薬物間相互作用をもたらす可能性が示唆された。
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