20年度は、ストレス負荷状態での脳へのLF透過性の変化、神経線維特異的なラクトフェリンの鎮痛作用発現ならびに一部の腫瘍症例に対する鎮痛効果について解析した。 1.ラットのストレス負荷状態におけるbLFの血液・脳脊髄液関門透過性変化の解析 成熟フットの尾静脈からbLF(10mg/kg)を投与し、拘束ストレス負荷群と無処置対照群について、2時間後に脳脊髄液(CSF)を採取してbLF濃度の変化を解析した。その結果、ストレス負荷群ではCSF中のbLF濃度は上昇傾向にあり、bLFのストレス軽減効果あるいは鎮痛効果に関連した生体反応であると考えられた。 2.成熟ラットにおけるbLFの鎮痛効果発現機序の解析 ラットの大腿神経中のAβ、AδおよびC線維が特異的に興奮する周波数を用いてそれぞれ電気刺激し、疼痛反応の発現閾値に対するbLFの効果を解析した。その結果、bLF(100mg/kg)を腹腔内投与すると、Aβ線維の閾値が有意に上昇する場合と、C線維の閾値が有意に上昇するケースがみられた。従って、bLFは痛みを伝達するC線維のみならず、感覚情報を伝達するC線維のみならず、感覚情報を伝達する神経線維に対しても作用することが示唆された。 3.消化器型リンパ腫症例における内臓痛軽減効果の解析 腫瘍組織の拡大に伴って内臓痛ならびに排便困難を呈する症例に対し、bLF(200mg/日)を3週間経口投与したところ、既存の鎮痛剤に比べて腹痛の軽減と排便の正常化ならびに一般状態の改善を認めた。今後は、他種の腫瘍症例についても例数を重ねて検討する。
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