研究課題
セルロースを含むゲル状バイオマスをヤドリギ、バジル及びサルビアの種子から調製し、原子間力顕微鏡により解析した結果、いずれも外皮細胞の内容物が起源であり、幅2-3nmのナノファイバーであることを見出した。また、いずれも中性多糖と酸性多糖の複合体からなること、中性多糖は植物の種に依存した変異が高いが、酸性多糖は共通してキシロースの2位で2~3残基当たりに4-0-メチルグルクロン酸が置換した分岐の極めて多いメチルグルクロノキシランであることを部分加水分解に続くオリゴ糖の分画と質量分析(MALDI/TOF/MS及びMS/MS分析)により世界で初めて証明することができた。また、ゲル状バイオマスの粘弾性解析により、ウロン酸のカルボキシル基による静電反発がゲル状に大きく寄与していることも証明した。その他、水素結合、疎水結合、カルシウムを介したエッグボックス状の架橋形成もまたゲル状を呈する原因となっていることも証明できた。また、いずれのゲルも熱安定性は低く、150-180℃、5分のマイクロ波加熱でゲル中のセルロースと酸性キシラン間の結合が開裂し、完全に二層に分裂すること、及び不溶化物には主としてセルロースが含まれ、その純度は加熱温度の上昇とともに高くなることから、これらのセルロースを含む水和ゲルがゲル状を呈するためには、酸性キシランとセルロース間の相互作用が不可欠であることがわかった。さらに、不溶化したセルロースにはアラビノガラクタンが強固に水素結合により結合していることをも見出したことから、セルロースとヘミセルロースは複合的な会合体を形成して水分子を取り込みゲル化していることが結論として得られた。また、ヤドリギのゲル状多糖中のセルロースの生合成に関与する遺伝子を調査した結果、VaCesA1とVaCesA2の二種の遺伝子の関与が強く示唆され、ゲル状バイオマスの生合成の基礎的知見が得られた。
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