つくば市と福岡市の2地域において、コシヒカリ(つくば市と福岡市)とヒノヒカリ(福岡市)の2品種の健全イネの葉圏における細菌集団構造の基礎的知見を得る目的で、全細菌数及び培養可能細菌ついての性状解析を行った。全細菌の測定は染色法を用い、培養可能細菌については平板希釈法で細菌数の計測を行った。とくに、今年度は、植物体成分の混入が少なく比較的解析しやすい葉面細菌について、全細菌数と培養可能菌数を比較した。その結果、両品種の葉面には約10^6 cfu/gの細菌が存在しており、そのうち約10^5 cfu/gの細菌が培養可能であった。葉内も合わせた葉圏には、約10^7〜10^8 cfu/gの培養可能な細菌が存在した。葉面における培養可能な細菌の構成のうち、グフム陰性でオキシダーゼおよびカタラーキシダーゼともに陽性の細菌群と、グラム陽性でオキシダーゼ陰性、カタフーゼ陽性の細菌群の2つが優占であった。また培養可能な全細菌のうち、AHL(アシル化ホモセリンラクトン)分解菌は13〜27%、および同生産菌は約5〜7%であった。 これらの結果、少なくともイネにおいて、全細菌が培養可能な細菌数より多く、イネの葉面には培養できない細菌が少なくとも培養可能細菌の10倍以上生息していることがはじめて示唆された。これまで土壤中には、培養可能細菌数は全細菌数の1%程度といわれているが、イネの葉面でも培養できない菌が圧倒的多く生息していることが示唆されたことは、植物体の微生物の利活用、遺伝子源として新な可能性があること、および生態系における微生物の役割を解析するうえで意義のある成果と考えるただし、本年度得られた結果の信頼性については、年度の反復が必要であり、20年度も引き続き検討する。
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