研究課題/領域番号 |
19380189
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森川 正章 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (20230104)
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研究分担者 |
鷲尾 健司 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教 (50241302)
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キーワード | バイオフィルム / 納豆菌 / ビタミンK2 / 菌体外生産 / バイオサーファクタント / トイレ便器 / アンモニア / 尿素分解酵素 |
研究概要 |
微生物が固体表面に付着して形成する構造体をバイオフィルムと呼ぶ。バイオフィルムでは細胞が高密度に存在するため、細胞間コミュニケーションが頻繁に起こり、個々の細胞が培養液中に浮遊した状態とは異なる挙動を示す。本研究課題はバイオフィルム形成機構の解析および、バイオフィルム形成に伴って発現するユニークな特徴を明らかにすることが目的である。特に本年度においては、健康に関わる微生物群のバイオフィルムについて検討を加えた。(1)納豆菌バイオフィルムによる疎水性ビタミンK2の放出機構を解析した。納豆菌がバイオフィルムを形成することでビタミンK2の菌体外生産性が5倍上昇することを発見した。その生産機構について解析したところ、バイオフィルム形成に伴って細胞外に蓄積するバイオサーファクタントが細胞膜に局在するビタミンK2を溶解および放出させる主要因であることを見出した。その生理学的な意義については現在のところ不明であるが、バイオフィルム形成およびバイオサーファクタントが有用物質生産の効率化に重要である例を示すことが出来た。(2)トイレの悪臭の主要原因は便器表面に付着した細菌が発生するアンモニアである。そこで、一ヶ月間洗浄しない便器表面から強固なバイオフィルムを形成するStaphylococcus属細菌T-02を取得した。本細菌は極めて高い尿素分解酵素活性を有しており、活性阻害剤を用いた実験結果等から、本酵素活性がバイオフィルム形成に不可欠であることを発見した。またバイオフィルムを形成した細胞では尿素分解酵素遺伝子がさらに高発現していることから、酵素生産とバイオフィルム形成が相乗作用していることを明らかにした。一方、活性阻害剤を添加することで、細菌の付着およびアンモニア臭が低減できることを発見した。以上により、バイオフィルムは有用微生物の高度利用および有害微生物制御のための重要な概念であることが証明された。
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