研究課題/領域番号 |
19380191
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
西河 淳 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (30218127)
|
研究分担者 |
殿塚 隆史 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究所, 准教授 (50285194)
土肥 多恵子 国立国際医療センター(研究部), 消化器疾患部, 部長 (60250221)
|
キーワード | ボツリヌス毒素 / レクチン / ムチン / ドラッグデリバリー |
研究概要 |
ボツリヌス毒素複合体は、神経毒素(NTX)とレクチン活性を持つタンパク質群(HA)から構成され、消化管内において上皮細胞の基本的な生理作用を巧みに利用し、上皮細胞層バリヤーを通過してNTXを体内循環系に送り込んでおり、このトランスサイトーシス経路にHAタンパク質が重要な役割を果たしていることが我々の研究で明らかとなった。本研究では、この巧みな機構を逆に利用し有用高分子物質を体内移行させるドラッグデリバリーベクターを創製することを目的としており、19年度は、以下のような研究成果を得た。 ・C型ボツリヌス毒素複合体構成成分であるHA1の2カ所ある糖結合クレフト内の特定アミノ酸を別のアミノ酸に置換することによりムチンに対する結合性が変化したミュータントを複数種調整し、各々で異なる糖結合特異性の違いをX線結晶構造解析の面から考察を加え、結果をまとめて学会発表、論文にて公表した。一例を挙げて具体的に述べると、シアル酸、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンに結合するサイト1のミュータントF179Iは、シアル酸に対する結合能のみを失っているが、これは、イソロイシンの側鎖によりシアル酸の尾部が結合サイトに入れなくなる立体障害によるものではなく、シアル酸の尾部を強く疎水性結合で引き寄せていたフェニルアラニンの側鎖が無くなったためであると推察できた。 ・毒素複合体構成成分でもう一つの糖結合性を示すHA3について結晶構造解析を行い、さらにシアル酸結合サイトを特定することに成功した。HA3は3つの分子がN末端側を内側にした3枚羽根のプロペラ状構造をしており、糖結合サイトはC末端側R525付近にあることがシアル酸のソーキングによるX線結晶構造解析や種々のミュータントのムチンへの結合量解析により明らかとなった。成果は学会で発表し、現在論文を投稿中である。
|