研究概要 |
タンパク質の蛍光標識技術の開発:動物由来培養細胞(HEK293細胞やCHO細胞)において,アジド-L-フェニルアラニン(AzPhe)をタンパク質に部位特異的に導入した.その後,AzPheとトリアリール・ボスフィンとの特異的な化学反応を利用して,蛍光物質をタンパク質に結合させるための技術開発を行なった.細胞内に発現しているタンパク質としては,癌遺伝子産物であるGrb2タンパク質をフルオレセインで標識することに成功した.この実験では,細胞粗抽出液をそのまま蛍光ホスフィンと反応させている.また,細胞膜上に発現している膜タンパク質についても,粗抽出液に蛍光ホスフィンを作用させることで蛍光標識に成功したが,さらに,細胞を破砕することなく,生細胞の膜上に発現している膜タンパク質を標識することも可能になった.この技術は,動物細胞において正しく膜上に発現している膜タンパク質のみを選択的に標識することに役立つ. 光クロスリンク技術の改良:トリフルオロメチル・ジアジリニル・フェニル基を側鎖に持つアミノ酸(Tmd-Phe)の利用を可能にする研究を行った.この非天然型アミノ酸は,従来使用してきたパラ・ベンゾイル・フェニルアラニンとは異なる化学反応様式によって,タンパク質どうしを架橋することができる.反応時間,側鎖のサイズの小ささなどの理由で,より有利だと考えられる.すでに報告されているアミノアシルtRNA合成酵素の様々な変異体をスクリーニングすることで,効率よくTmd-Pheを認識する変異体を見出すことができた.このアプローチは,一から特異的な変異体を作成するよりもはるかに低コスト,低労力で目的の非天然型アミノ酸の導入を可能にする.実際に,動物細胞においてこのアミノ酸をタンパク質に部位特異的に導入することに成功した.
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