| 研究概要 |
本研究課題では、イミダゾリウム塩を共通の母核構造として有する「含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)」と「イオン液体(IL)」という興味ある二つの化学種の特性を生かした反応系の探索と展開を目指している。本年度は、IL中でのエニンメタセシス反応を中心に検討した。すなわち、申請者らは最近Guillemin, Mauduitらによって報告された「IL類似構造をテザ一部分に持つRu錯体」を用いたIL中でのエニンメタセシス反応を詳細に検討し、エチレン雰囲気下で反応を行うことで触媒のリサイクルが可能になることを見出したが、オレフィンメタセシス反応と比較してそのリサイクル効率には問題を残していた。おそらく、反応をエチレン雰囲気下で行っているため、錯体中のTSIL構造部位とエチレンとの反応によりRu-ビニリデン錯体が形成され、この錯体が反応終了時に元のRu錯体へと戻りにくいため、抽出の際に錯体のリーチングが起こっていると考えられた。そこで、Ru錯体内のTSIL構造の導入部位に注目し、Ru錯体に強力に配位している含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)配位子上にTSIL構造を持たせたRu錯体を合成した。その結果、ILとしては[BMI][NTf_2]を用いた場合は2回の触媒リサイクルが可能となった。更に、リサイクル効率の向上を目指し、カルベン部位にもTSIL部位を導入したRu錯体の合成を行ない、エニンメタセシス反応を種々検討した。その結果、TSIL部位を二箇所に持つこのRu錯体を用いるとオレフィン、及びエニンメタセシス反応において触媒のリサイクルを効率良く行うことができることが分かった。
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