研究概要 |
本年度は,連続反応におけるキラルカルバニオンの立体制御を目的として,新規なキラルカルバニオンの発生法の開発,その立体化学的安定性,そして不斉転写の立体過程などに関して以下のような検討を行った. 1.β-シリル-α,β-エポキシアルデヒドの0-カルバモイルシアノヒドリンを基質として,エポキシシラン転位・アルキル化を行い不斉誘起を検討した結果,最大70:30のエナンチオマー比でニトリル基の隣接位に不斉転写を実現することができた.さらに,シアノ基の隣接位に遊離キラルカルバニオンが発生しているかどうかを確認するために,脂肪鎖を有する0-カルバモイルシアノヒドリンに対し,アルキル化剤の存在下塩基を作用させたところ55:45程度のエナンチオマー比でアルキル化体を得た.この結果は,上記不斉転写がエポキシシラン転位の協奏的過程と遊離のキラルカルバニオンの介在の両方に基づくものであることを示唆している. 2.キラルカルバニオンの分子内捕捉系として[2,3]-Wittig転位に着目し,新たに構築された不斉点における不斉誘起の程度に基づいて種々の置換基によるキラルカルバニオンの立体化学的安定性に関する知見を得ることに成功した. 3.アリルシリケートのS_E'型の反応の立体過程を明らかにすることを目的として,六員環上の適当な位置にハロエチル基を有するα-シリル-アリルアルコール誘導体をデザインし,実際に合成することができた.来年度は,本基質を用いてBrook転位/環化反応を検討し,生成するエノールシリルエーテルの立体化学に基づき,S_E'型の求電子反応の立体化学を明らかにする予定である.
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