| 研究概要 |
Natronomonas pharaonisの細胞膜に存在するハロロドブシン(NpHR)は,光で駆動されるハロゲンイオンポンプである.すなわち,光照射でハロゲンイオン(生理的にはC1イオン)を細胞外から内へ輸送する.このNpHRを研究材料に用いて,以下の研究を行った.
1.3量体を形成しているかどうかについて,確認実験をまず行った.大腸菌の大量発現系で得たHpHRを用い,界面活性剤中(n-dodecyl-β-maltoside)で,ゲル濾過,質量分析等を行い,3量体を形成していることを再度証明した.また,高度好塩菌で発現系を利用し,好塩菌の細胞膜でも,すなわち,生理条件下でも,3量体になっていること示した.
2.NpHRは暗所で,C1イオンが結合している.結合定数を等温滴定型熱量計で調べた.C1イオンが結合すると,吸収波長が短波長にシフトする.このシフトのC1濃度依存性から従来は結合常数を求めていた.等温滴定型熱量計を用いて求めた値は,可視吸収極大波長シフトから求めた値とよく一致した.熱測定では,結合によるエンタルピーおよびエントロピー変化が求められる.これらの熱力学量は本研究によって初めて得られたものである.
3.上記で述べたC1結合に重要であるアミノ酸残基を同定した.
4.光化学中間体のN-中間体から0-中間体への移行に伴って,C1イオンが細胞内へ放出される.この放出の解離定数を決めているアミノ酸残基を同定した.
5.NpHRをアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させ,C1輸送を電流として測定できることを示した.この系の特徴を生かして,膜に電位差を与えたときの,C1ポンプ活性を調べた.電位差が掛かると活性が低下する理由を考察した.
|
