研究概要 |
フォスタグ技術を世界標準のリン酸化プロテオーム解析技術にすることを目的として,1)フォスタグのリン酸基結合能と生体分子の特異的な分子認識機能を組み合わせた分析法,2)フォスタグ技術を組み込んだハイスループットなリン酸化生体分子の検出法,3)リン酸化タンパク質のプロファイリングを目的とした新しい二次元電気泳動法,4)質量分析前処理用の耐圧性リン酸アフィニティーゲル担体,5)フォスタグとリン酸基の結合により誘導される蛍光共鳴エネルギー移動を利用したリン酸化反応の分析法の開発を3年度計画で行った。本年度は,蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したリン酸化ペプチドのキナーゼ反応を解析するシステムを開発した。蛍光分子の組み合わせを検討した結果,基質となるリン酸化ペプチドにフルオレッセインを結合した分子と,アミノクマリンを結合したフォスタグの組み合わせの場合,キナーゼ反応に不可欠なATP存在下でも有効なFRET現象が起きることが明らかになった。それらの蛍光分子の組み合わせに,キナーゼを作用させると,FRET効率の増加を観察することができた。今後,この蛍光分析システムを,様々なキナーゼ反応の解析に利用することを検討していく予定である。また,フォスタグ電気泳動法は,リン酸化タンパク質の分離分析以外にも,ダメージを受けた生体試料内の遺伝子変異の同時検出にも適用可能であることを見いだした。さらに,長期間保存可能なフォスタグゲルの開発にも成功した.本研究で開発した新しいリン酸化合物解析法は,今後のリン酸化プロテオーム研究を劇的に促進するものであると確信している。
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