研究概要 |
リポ蛋白質作用を仲介する機能(1)血管内皮細胞における高密度リポ蛋白質(HDL)作用とスフィンゴシン1-リン酸(S1P):ヒト血管内皮細胞を用い,HDLによるVCAM-1などの細胞接着分子発現抑制を解析した。その結果,HDLの少なくとも一部の作用はHDL中のS1Pを介し,S1P1受容体/Gi/NO合成酵素/NF-kB抑制/細胞接着分子mRNA発現抑制の経路を介していることをS1P受容体特異的なsiRNA,アンタゴニスト,細胞内シグナル系に対する特異的な阻害薬を用い明らかにした。(2)血管平滑筋細胞における低密度リポ蛋白質(LDL)作用とリゾホスファチジン酸(LPA):ヒト血管平滑筋細胞においてLDLは細胞増殖,遊走を促進する。これらの作用は血管形成術後の血管肥厚の原因である。これらの作用がLPAに基づくことを,受容体siRNA,LPAアンタゴニストKi16425などを用い証明した。また,実際にLPAがLDL中に存在することはLPA1受容体過剰発現細胞でのcAMP産生低下を指標にした方法により確認した。細胞外pHセンサー機能(3)従来リガンド非依存性といわれていた応答のプロトン依存性の証明:プロトン感知性受容体を過剰発現すると,リガンド非依存性応答として,各種細胞内転写活性(SREなど)促進,ERK活性化能の抑制など様々な作用が報告されている。そこで,GPR4などの受容体を過剰発現したHEK293細胞を用い,SREプロモーター活性,ERK活性測定を行い,従来リガンド非依存性といわれていた応答が細胞外のわずかなpH変化に基づくことを証明した。(4)好中球の感染防御系におけるTDAG8の役割:細胞外pHの低下は好中球様に分化させたHL-60細胞において走化性ペプチドfMLPによるスーパーオキシド産生を抑制する。この応答がcAMPを介していることをプロテインキナーゼA阻害剤H89など用い証明した。また,マウス好中球,分化HL-60細胞ではTDAG8受容体を発現している。そこで,現在,TDAG8受容体変異マウスから調製した好中球を用い,細胞外pH変化に伴う作用がTDAG8を介しているかどうかを解析している。
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