研究概要 |
1.ポリアミン(プトレスシン,スペルミジン,スペルミン)は翻訳レベルで細胞増殖に重要な特定蛋白質の合成を促進することにより細胞増殖を促進する。私達はこれら蛋白質をコードする遺伝子群をポリアミンモジュロンと命名し,大腸菌においてこれまで6種(OppA,Cya,σ^<38>,Fecl,Fis及びRF2)のポリアミンモジュロンを同定した。今回,新たにσ^<54>,Cra及びH-NSをコードする遺伝子をポリアミンモジュロンとして同定し,ポリアミンによる蛋白質合成促進機序を分子レベルで明らかにした。更に,σ^<24>とStpAをコードする遺伝子がポリアミンモジュロンとして同定され,その促進メカニズムを解析中である。 2.NMDA受容体の活性化に関わるスペルミン結合部位は,アゴニスト結合部位の更にN末端側に存在していた。この部位を調節領域(R-domain)と命名し,この約350アミノ酸残基から成るR-domainを大腸菌で発現させ,3種の精製R-dolnain(NR1-R,NR2A-R及びNR2B-R)を得た。これらR-domainへのスペルミン,脳機能改善薬イフェンプロジルの結合能を測定した。更に,現在はこれら3種のR-domainのX線結晶構造解析を目指している。 3.細胞内ポリアミン濃度は生合成・分解・輸送により調節されている。ポリアミン輸送系に関して,私達はこれまでに大腸菌で2種のポリアミン取り込み系と3種のポリアミン排出系を同定し,その性質を明らかにしてきた。今回は酵母のポリアミン取り込み蛋白質としてDUR3とSAM3を同定し,プトレスシン,スペルミジンに対するKm値を求めた。また,DUR3はポリアミン輸送プロテインキナーゼ2(PTK2)によりThr^<250>,Ser^<251>及びThr^<684>がリン酸化され,活性化されることが明らかとなった。
|