研究概要 |
昨年度までに,(即時型)蚊アレルギーのマウスモデルの痒みの発生に膜リン脂質代謝物の一つリポキシンA4(LXA4)が関与し,その産生には皮膚内のCD4陽性T細胞が重要な役割を担うことを明らかにした。CD4陽性T細胞の活性化には樹状細胞(皮膚ではラングルハンス細胞LC)との相互作用が報告されている。そこでまず,LCを特異的に減少させるエトレチネートを2週間経口投与し,蚊アレルギーによる痒みが抑制されることを明らかにした。感作マウス皮膚から単離したLCとCD4陽性T細胞の共培養系を抗原刺激するとLXA4産生が増加した結果と合わせ,蚊アレルギーによる痒み反応にLC―CD4陽性T細胞系が関与すると推論した。次に,蚊唾液腺中の抗原をFITCで標識して皮内注射し,皮膚の細胞内に抗原が取り込まれることを確認した。現在,LCを認識する抗ラングリン抗体および活性化LCを認識する抗MHC Class-II抗体を用いた二重染色法により,抗原取込み細胞の同定を行っている。LCとCD4陽性T細胞の共培養系を抗原刺激すると,培養液中には,LXA4の遊離増加に加え,セリンプロテアーゼの活性が増加する可能性を見出した。CD4陽性T細胞にはセリンプロテアーゼが複数含有されることから,その同定を試みている。本研究の結果を勘案して,蚊アレルギーの痒みの発生機序を次のように考えている。繰り返し蚊刺を受け感作が成立した状態で,蚊刺を受けるとLC―CD4陽性T細胞系が駆動し,CD4陽性T細胞によるLXA4の産生・遊離が増加する。LXA4はオートクリン的にCD4陽性T細胞の活性化を亢進する。活性化されたCD4陽性T細胞から十分量のセリンプロテアーゼが遊離されると,これがケラチノサイトのプロテーアーゼ活性化受容体2を刺激する。ケラチノサイトは多種多様な痒み因子と痒み増強因子を産生・遊離することにより痒みが発生する。
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