研究課題
我々は血小板の分化成熟に関与する可能性の高い11種の転写因子について、これらが血小板分化に及ぼす影響を解析することを目的とし研究を進めている。今回我々は、PF4-GFP-ES細胞(PF4プロモーターの下流にGFPとpolyAシグナルを連結したトランスジーン1コピーを、Hprt遺伝子座上流に組み込んだES細胞株)を用いて、ES細胞の分化の途中で血小板系列特異的にGFP遺伝子を強制発現させることができるかどうかを検証した。まず、PF4-GFP-ES細胞をOP9ストローマ細胞上で培養した。5日間培養し、FACSを用いてFlk-1陽性の中胚葉系細胞へと分化していることを確認した。得られた細胞を、新しいOP9細胞上に播種し、トロンボポエチンを加えて培養を続け、血小板への分化誘導を行ったところ、培養9日目にGFPの蛍光を発する細胞を再現性よく確認できた。この分化させた細胞から、CD41(巨核球の分化マーカー)抗体と磁気ビーズを用いてCD41陽性の巨核球を分離したところ、CD41陽性細胞のみGFP陽性細胞を含み、CD41陰性細胞には蛍光を発する細胞は観察されなかった。同様の結果は、FACSにおいても確認された。以上の結果から、本システムにより血小板系列特異的に目的遺伝子を発現させることができることが明らかとなった。また、この系を用いた予備実験において、RUNX1遺伝子を血小板分化途中に強制発現させると、巨核球数が増加する結果が得られ、RUNX1遺伝子の血小板分化への関与が示唆された。しかし、現在のシステムでは、巨核球には高効率で分化するものの、分化途中にGFPを発現する細胞の割合が少ないことがわかっている。現在、遺伝子発現効率の改善のため、プロモーターの選択、トランスジーンの構築(インスレーター配列の導入など)について、遺伝子強制発現システムの更なる最適化を行っている。
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Experimental Hematology 37
ページ: 334-345
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