研究課題/領域番号 |
19390024
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
杉浦 麗子 近畿大学, 薬学部, 教授 (90294206)
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研究分担者 |
喜多 綾子 近畿大学, 薬学部, 助教 (00388498)
掛樋 一晃 近畿大学, 薬学部, 教授 (30101405)
村岡 修 近畿大学, 薬学部, 教授 (20142599)
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キーワード | MAPキナーゼ / 細胞内シグナル伝達 / ゲノム創薬 / 低分子量Gタンパク質 / モデル生物 / 分裂酵母 / 細胞内輸送 |
研究概要 |
本研究課題は、独自の遺伝薬理学的スクリーニシグを駆使することにより、ヒトの癌化に重要な役割を果たすMAPキナーゼシグナル伝達経路の制御因子の同定と、それらの因子がMAPKを制御するメカニズムを解明することで、抗がん薬を始めとした新規分子標的治療薬の創製の基盤となる知見を得ることを目標としている。本年度の成果として、低分子量Gタンパク質Rho3とクラスリンアダプター複合体の機能的連携を発見した。我々は、現在までにクラスリンアダプター複合体が細胞内の物質運搬に重要であることを突き止めていたが、今回新たにRho3とクラスリンアダプター複合体が結合し、協力しながら、ゴルジ体における物質の運搬を調節するという仕組みを発見した。我々は、クラスリンアダプター複合体の機能が低下した特殊な細胞を作製し、この細胞の働きを補うことのできる遺伝子としてRho3を発見した。また、電子顕微鏡を用いて、Rho3の働きを失った細胞では、異常に肥厚したゴルジ体や、運搬されない物質がゴルジ体の近くに蓄積していることも明らかにした。これは、Rho3タンパク質がゴルジ体の物質の運搬に重要な役割をしていることを強く示唆する結果である。しかも、クラスリンアダプター複合体とRho3は、どちらもゴルジ体に局在し、結合することも明らかにした。ヒトにもRho3と非常に良く似たRhoタンパク質が存在し、物質の運搬や細胞の形態形成、がんの発症や転移に関わっている。今回の研究成果は、細胞のがん化や転移の仕組みを解明し、Rhoを標的とした新しい抗がん薬創製の手がかりとなる可能性がある。本研究成果はその重要性と高いインパクトから、アメリカ科学誌(PLoS ONE)の電子版に掲載され、日本経済産業新聞においても報道された。
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