昨年度に引き続き、複数のコラーゲン結合タンパク質に対する阻害剤のスクリーニングを行った。また、同様のスクリーニングにより得られた、色素上皮由来因子(PEDF)に結合するコラーゲン様ペプチドを用いて、PEDFの血管新生阻害活性発現のメカニズムについて新しい知見を得た。 1.コラーゲン結合タンパク質阻害剤のスクリーニング 血管新生阻害タンパク質であるPEDFをターゲットとして、市販の低分子重化合物1万検体のスクリーニングを行った。その結果20化合物がヒット候補として選択された。興味深いことに、これらヒット候補化合物には複数の共通骨格が見いだされた。また、コラーゲン特異的分子シャペロンであるheat-shock protein 47(HSP47)をターゲットとした約1200検体のスクリーニングから6個のヒット候補化合物が得られた。さらに、コラーゲンに直接作用してその線維化を阻害する低分子量化合物のスクリーニングも同時に行った。その結果、約1万1千検体から、12化合物が候補として選択された。 2.PEDFに結合するペプチドの生物機能 すでに本研究において、PEDFが結合するコラーゲン上のアミノ酸配列を明らかにしている。この配列を有する合成ペプチドを用いて種々の生化学的検討を行った。その結果、PEDFが認識するコラーゲン上の配列は、コラーゲン上のへパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)結合配列と重複していることが明らかになった。実際に、コラーゲンへのPEDFの結合はへパリンによって阻害された。このことから、PEDFがコラーゲン-HSPG相互作用を変調させることによって、その血管新生阻害活性を発揮している可能性が示唆された。
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