1.コラーゲンのインビトロでの線維化測定を基盤とするhigh-throughput screeningを実施し、以下のようなヒット検体を得た。被検物質としては市販あるいは供与を受けた合成低分子量化合物、計約2万検体を用いた。 1)分子シャペロンHSP47とコラーゲンとの結合を阻害する化合物 昨年度のスクリーニングから取得した20検体について詳細な解析を行った。活性化合物のうちひとつのグループは、長鎖脂肪酸の誘導体であった。また、最も有望な検体については、提出構造であるトリペプチド化合物は活性本体ではなく、合成途上の副反応物、あるいは保存中の分解物であることが示唆された。本物質については、メーカーの合成プロトコルを入手し、自前で再合成をすすめている。 2)コラーゲンの自己集合による線維化を阻害するプラチナ錯体の発見 約2万検体からコラーゲンの線維化を阻害する数種のヒット検体を得た。うちいくつかはすでに報告のあるポリアニオン性化合物であった。その他には抗がん剤シスプラチンがヒットした。しかし、シスプラチン自体は活性本体ではなく、シスプラチンが溶媒であるDMSOと保存中に反応して生成したプラチナ-DMSO錯体が活性の本体であることが示唆された。 2.色素上皮由来因子(PEDF)とコラーゲンとの相互作用 昨年度取得したコラーゲン様ペプチドをリードとした構造活性相関研究を行った。その結果、PEDFが結合する最小のアミノ酸配列モチーフを決定した。また、ヘパリン/ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が結合する配列モチーフついても同様に決定した。これらの結果から、PEDFとヘパリン/HSPGは、一部重複しているが、異なった認識機構をもってコラーゲン3重らせんと結合していることが分かった。さらに、PEDF、ヘパリン/HSPG、コラーゲンは、ある条件において3者複合体を形成しうることが示された。
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