研究概要 |
抗がん剤による悪性腫瘍の治療においては、効果発現や副作用発現に大きな個人差があることが問題となっており、有効かつ安全な治療を行うために、患者毎の投与法の確立が急務とされている。本研究では骨髄毒性、特にその中でも重篤な発熱性好中球減少症の発症個人差を定量的に予測する方法論の確立を目指して検討を行った。 本年度は、前年度に確立したin vitro解析手法から得られるパラメータを基に、in vivoにおけるCD4+T細胞数減少が予測可能であるかを検証するため、マウスin vivoにおける抗がん剤投与実験を行った。T細胞は末梢リンパ組織にその大部分が貯蔵されている末梢循環細胞であるため、循環血液中の細胞数に加え、脾臓中の細胞数も測定対象とした。マウスにetoposide(50mg/kg),cytarabine(20mg/kg),5-fluorouracil(65mg/kg)をそれぞれ静脈内投与した後、0.5,1,2,5日目のCD4+T細胞数を、フローサイトメトリーを用いて測定した。in vitro感受性試験において強い毒性が観察されたetoposideおよびcytarabineに関しては、CD4+T細胞数の急速な減少がin vivoにおいても観察された。一方、in vitro感受性試験において毒性の低かった5-fluorouracilに関しては、有意なCD4+T細胞数の減少は観察されなかった。また、末梢全体のCD4+T細胞数を、血液中および脾臓中のCD4+T細胞数実測値を基に算出し、in vitroで構築した抗がん剤感受性記述モデルと、各薬物の血漿中濃度プロファイルを用いて予測される、末梢CD4+T細胞の減少プロファイルと比較した。その結果、いずれの薬物に関しても良好な予測となることが示された。
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