研究概要 |
結核化学療法の問題点は、重篤な副作用である薬剤性肝障害や効果不十分例の存在である。 N-acetyltransferase 2(NAT2)遺伝子多型に基づいて用量設定されたisoniazid(INH)の個別化適正投与法(ゲノム与薬法)は、薬剤性肝障害の回避のみならず治癒率の向上が期待される。本研究では、国際規模で行う検証的な前向きPharmacogenomics(PGx)臨床試験により、INHの代謝酵素NAT2遺伝子多型に基づくINHのゲノム与薬法のエビデンスを構築することを主目的とした。結核の個別化適正治療法を国際標準として確立することを最終目標とし、以下の検討を行った。1)検証的前向きPGx臨床試験の実施:NAT2遺伝子型別のINH投与法の安全性と有効性とを評価するため、我が国では多施設によるランダム化比較試験を実施し、症例を集積した。また、日欧の研究グループが協力して欧州での試験実施計画を確定した。2)医薬経済学的評価:INHゲノム与薬法の経済学的有用性を国際的に検討評価するために、ドイツにおける結核医療費を調査した。3)NAT2^*19の臨床的意義の解明:日本人で見出されたNAT2^*19は臨床的に顕著な影響を及ぼす低活性型アレルであり、INH代謝能が低いため薬剤性肝障害のリスク因子となることを明らかにした。4)NAT2遺伝子チップの開発:NAT2^*5,^*6,^*7に加え^*19をも判別可能な遺伝子チップについて検討し評価した。以上、NAT2遺伝子多型に基づく結核治療法の実用化に向けたクリティカル・パス・リサーチを推進できた。
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